歯周病治療
歯を失う最大の原因、それは虫歯ではありません
「いずれ歯を失うとしたらその原因はきっと虫歯だろう」
多くの方がそのように考えていらっしゃるかもしれません。しかし実は、成人が歯を失う最も大きな原因は虫歯ではなく「歯周病」なのです。
「歯磨きの時に歯ぐきから血が出ることがある」
「朝起きた時お口の中がネバネバする」
「口の臭いが少し気になるようになった」
これらの症状に心当たりはありませんか。多くの方が「大したことない」「疲れているだけだろう」と見過ごしがちなこうした些細なサインこそ、あなたの歯の土台が静かに崩れ始めていることを示す歯周病の危険信号なのです。
歯周病は自覚症状がほとんどないまま進行し、気づいた時には手遅れになっていることも少なくない非常に恐ろしい病気です。だからこそ私たちはこの歯周病治療に特別な想いと情熱を注いでいます。
歯周病という病気の正体と、それに対する私たちの治療方針やこだわりについて詳しくお話しさせていただきます。あなたのそしてあなたの大切な方の歯を、生涯にわたって守るための一助となれば幸いです。
歯周病という「静かなる病」の正体

歯を支える土台が、静かに溶けていく病気
そもそも歯周病とはどのような病気なのでしょうか。
簡単にお伝えすると「お口の中の細菌によって歯を支えている顎の骨が溶かされてしまう病気」です。
私たちのお口の中には常にたくさんの細菌が存在します。日々の歯磨きが不十分だと歯の表面にプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊が付着します。このプラークこそが歯周病の直接的な原因です。
プラークの中の歯周病菌は歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)から内部に侵入し、毒素を出し始めます。すると私たちの体はその毒素から身を守ろうとして免疫反応を起こし、歯ぐきに「炎症」が生じます。これが歯周病の初期段階である「歯肉炎」です。歯ぐきが赤く腫れたり歯磨きで出血したりするのはこの炎症が原因です。
この段階で適切な対処をすれば歯ぐきはまた健康な状態に戻ります。しかし炎症が続いたまま放置されると事態はさらに深刻になります。免疫細胞は細菌を攻撃するだけでなく、細菌に感染した歯ぐきやその下にある歯を支える骨(歯槽骨)までをも「異物」とみなし破壊し始めてしまうのです。
歯を支える大切な骨が知らず知らずのうちに溶かされていく。そして痛みなどの明確な自覚症状が現れる頃には骨は大きく失われ、歯がグラグラになりついには抜け落ちてしまう。これが歯周病が「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれる所以です。
お口の中だけの問題ではありません
歯周病がもたらす影響は歯を失うことだけに留まりません。
お口の中では歯ぐきが痩せて歯が長く見えたり、歯と歯の間に隙間ができて食べ物が詰まりやすくなったりと見た目の問題も引き起こします。また歯周病菌が作り出すガスは強い口臭の原因ともなります。
さらに近年では歯周病菌が歯ぐきの血管から体内に侵入し、全身の様々な病気のリスクを高めることが明らかになってきました。糖尿病や心臓病、動脈硬化、そして高齢者の誤嚥性肺炎など命に関わる病気との深い関連性も指摘されています。
お口の健康は全身の健康の入り口です。歯周病を治療しお口の中を清潔に保つことは、あなたの人生そのものを健やかに保つために非常に重要なことなのです。
あなたは大丈夫?歯周病の進行段階とセルフチェック
歯周病はその進行度によって「歯肉炎」と「歯周炎」に大別されます。ご自身の状態と照らし合わせてみてください。

軽度歯周病(歯肉炎)
歯ぐきが炎症を起こしているだけの段階です。骨の破壊はまだ始まっていません。
- 歯磨きをすると時々血が出ることがある
- 歯ぐきが以前より少し赤みを帯びている
- 歯ぐきが少しむずがゆい感じがする
この段階であれば歯科医院での専門的なクリーニングと、日々の正しい歯磨きで健康な歯ぐきを取り戻すことが可能です。
中等度歯周病(歯周炎)
炎症が歯ぐきの奥深くに広がり、歯を支える骨が溶け始めた段階です。
- 歯ぐきから血だけでなく膿が出ることもある
- 歯ぐきが赤紫色に腫れぼったくなっている
- 歯が浮いたような感じがする
- 口臭が気になるようになった
- 歯ぐきが下がり歯が長くなったように見える
この段階では歯ぐきの奥深くに付着した歯石などを取り除く専門的な治療が不可欠です。
重度歯周病(歯周炎)
歯を支える骨が半分以上溶けてしまい、歯が大きく揺れ始めた非常に危険な状態です。
- 歯がグラグラして硬いものが噛みにくい
- 歯ぐきは常に腫れており頻繁に出血や排膿がある
- 歯並びが変わってきたように感じる
- 何もしなくても歯ぐきが痛むことがある
ここまで進行すると治療も大掛かりになり、残念ながら歯を残すことが難しくなるケースもあります。
一つでも当てはまる症状があれば、それはあなたの歯ぐきが発するSOSサインです。どうか「まだ大丈夫」と思わず手遅れになる前に、私たち専門家にご相談ください。
やくし歯科・矯正歯科の歯周病治療
私たちの治療方針「すべては精密な診査・診断から」

「これまでも歯医者で歯石を取ってもらってきたけれどあまり良くならなかった」
そのような経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。その原因はもしかしたら「根本原因」へのアプローチが不十分だったのかもしれません。
歯周病治療の成否はいかに患者様一人ひとりのお口の状態を正確に把握できるかにかかっています。私たちは治療を始める前にまず時間をかけて精密な検査を行います。
- 歯周ポケット検査
歯と歯ぐきの間の溝の深さを測定し病気の進行度を把握します。 - レントゲン・CT検査
目では見えない歯を支える骨の状態を詳細に確認します。 - 口腔内写真撮影
現在の歯ぐきの色や形を記録し治療経過の比較に用います。 - 噛み合わせの検査
特定の歯に過度な力がかかっていないかを確認します。
これらの検査結果を基になぜあなたの歯周病が進行したのか、その根本原因を突き止めます。そして現在の状況と今後の治療計画について写真や図をお見せしながら、ご納得いただけるまで丁寧に説明することをお約束します。
全ての基本となる徹底的なクリーニング
歯周病治療の基本であり最も重要なことは、原因であるプラークや歯石を徹底的に除去することです。
治療の主役は患者様ご自身です【ブラッシング指導】

どれほど歯科医院で専門的なクリーニングを行っても、日々の歯磨きがおろそかになっては残念ながら歯周病は改善しません。お口の中はたった一日で再び細菌で満たされてしまうからです。
しかし、ただやみくもに強く磨けば良いというものではありません。人それぞれ歯並びや歯の形は異なります。当院では経験豊富な歯科衛生士が、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた、いわば「オーダーメイドの歯磨き方法」を丁寧にお伝えします。歯ブラシの選び方から歯間ブラシやフロスの使い方まで、毎日のセルフケアが効果的に行えるようしっかりとサポートします。
プロによる専門的なクリーニング 【スケーリング】

プラークが唾液中のカルシウムなどと結びついて石のように硬くなったものが「歯石」です。歯石の表面はザラザラしているためさらにプラークが付着しやすくなる、まさに「細菌の温床」です。そしてこの歯石はご自身の歯磨きだけでは決して取り除くことができません。
「スケーリング」とは超音波の力を利用した専用の器具などを用いて、この歯石を専門的に除去する処置です。歯石を取り除いた後は歯の表面を専用のペーストで磨き上げツルツルの状態にします。コーティングを施した車に汚れが付きにくくなるのと同じで、歯の表面を滑らかにすることでプラークや歯石の再付着を防ぐのです。
歯ぐきの奥深くに潜む汚れへの挑戦【SRP】
歯周病が進行すると歯石は歯の表面だけでなく、歯ぐきの奥深く歯の根の表面にまでこびりついてしまいます。この歯ぐきの中の歯石こそ、歯を支える骨を直接攻撃する最も悪質な汚れです。
「SRP」とは歯ぐきの奥深くの見えない部分に付着した歯石や、細菌に汚染された歯の根の表面を繊細な手用の器具などで丁寧に除去していく、歯周病治療の核心となる処置です。処置の際には痛みを伴うこともあるため、必要に応じて麻酔を使用し患者様の負担を最小限に抑えながら行いますのでご安心ください。
歯を残すための、さらに進んだ治療
中等度から重度にまで進行してしまった歯周病の場合、SRPだけでは汚れを完全に取り除けないことがあります。そのような場合でも私たちは決して諦めません。歯を残すためのさらに専門性の高い治療の選択肢があります。
歯ぐきの中を直接きれいにする【歯周外科治療(FOP)】
これは麻酔をした上で歯ぐきを一時的に開き、歯の根の表面を直接目で見て確認しながら、SRPでは届かなかった深い部分の歯石や感染組織を徹底的に取り除く外科的な処置です。「直視下」で処置を行うため汚れの取り残しがほとんどなく、非常に確実性の高い治療法と言えます。
失われた骨を再生させる【歯周組織再生療法】
歯周外科治療を行う際に特殊な薬剤や膜を用いることで、歯周病によって失われてしまった歯を支える骨の再生を促す治療法です。「もう抜くしかない」と言われた歯でもこの再生療法によって保存できる可能性があります。諦めかけていた患者様にとって大きな希望となる先進的な治療法です。
揺れる歯を守る【咬合調整と暫間固定】
歯周病の治療は汚れを取るだけでは終わりません。弱ってしまった歯ぐきや骨に過度な噛み合わせの力がかかることで歯周病はさらに悪化してしまいます。そのため全体の噛み合わせのバランスを精密に調整し、特定の歯に負担がかからないようにすることが非常に重要です。また揺れが大きな歯に対しては隣の歯と一時的に接着剤で連結して固定(暫間固定)することで、歯を安静な状態に保ち歯ぐきの治癒を助けます。
健康な歯ぐきをこの先もずっと

丁寧な治療によって歯ぐきの腫れや出血は治まり、健康的なピンク色の引き締まった状態を取り戻すことができます。しかしここで安心してはいけません。歯周病は高血圧や糖尿病と同じように「生活習慣病」の一つであり、一度良くなっても日々のケアや生活習慣が元に戻ればいつでも再発するリスクを抱えています。
治療の完了はゴールではなく、健康な状態を維持していくための新たな「スタート」です。
私たちは治療後の定期的なメンテナンスを何よりも大切に考えています。2〜3ヶ月に一度ご来院いただき専門家による徹底的なクリーニング(PMTC)を受けることで、ご自身の歯磨きでは落としきれない汚れを取り除き再発のリスクを最小限に抑えることができます。またメンテナンスの際には歯ぐきの状態や噛み合わせに変化がないかを細かくチェックし、問題があれば早期に対応します。
歯周病は決して治らない病気ではありません
歯周病は自覚症状が出にくいとても怖い病気です。しかし正しい知識を持ち、信頼できる歯科医院で適切な治療とメンテナンスを受ければ、その進行を食い止め健康な状態を取り戻しそして維持していくことは十分に可能です。
あなたの大切な歯を未来まで守り抜くために。
もし少しでも歯ぐきに気になることがあれば、どうか手遅れになる前に私たちやくし歯科・矯正歯科にご相談ください。私たちはあなたの健康な未来を創るための生涯のパートナーでありたいと願っています。